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ナレッジ

川村雅彦のサステナビリティ・コラム

『統合思考経営』のWhy, What & How(第31回)

なぜ今、「統合思考経営」なのか?
~ESGを踏まえた長期にわたる価値創造のために~

人材多様性と人材ポートフォリオ(その4)
~歴史的役割を終えたメンバーシップ型雇用慣行の自己改造が始まった~

前回(第30回)は、日本企業が昭和的な同質性集団から脱して、いかに多様性集団に転換するかという問題意識の下、「人材ポートフォリオ」を考える雇用慣行3軸の2つ目「キァリア形成(人事制度)」を取り上げました。その中で、「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への移行を論じました。
今回は、前回と同じ軸で、社員の自律的キャリア形成に資する人事施策(社内公募・社内FA・社内転職、副業、リスキリング、メンタリング)に着目し、それぞれの特徴と効用について述べます。

時代の要請に応えられない「メンバーシップ型雇用慣行」

「ジョブ型へ移行」と声高に叫ばずとも、日本企業のメンバーシップ型雇用慣行が自ら改造を始めていますメンバーシップ型は、人口増加と高度成長を条件に、企業求人と新卒者がともに増える時期にだけ機能する特殊な仕組みであり、少子高齢社会の構造的「売り手市場」では成立しないことが分かってきました。
本稿では、近年注目される新しい人事制度として、社内公募・社内FA・社内転職、副業、リスキリング、メンタリングに焦点を当て(図表1)、それぞれの特徴とメンバーシップ型雇用慣行への影響を考えます。これらは、もはや時代の要請に応えられないメンバーシップ型雇用慣行の弊害を克服しようとするものです。

図表1:「人材ポートフォリオ」を考える雇用慣行3軸
  • (資料)筆者作成(本図は、本コラムシリーズ第28回の図表2に加筆のうえ再掲)

以下の<目次>は、フルレポート(稿末参照から「見出し」を抜粋したものです。
この「見出し」から、筆者の着眼点や問題意識がご理解いただけると思います。
ご関心のある所や直面する課題からお読みください。

<目次>

時代の要請に応えられない「メンバーシップ型雇用慣行」

年功序列人事を崩す自律的な「社内異動制度」

  • 社員-人事部-会社の関係を変える「社内異動制度」
  • 人事部主導の年功序列型人事が「競争力の足枷」に
【自律的な「社内異動制度」3種の特徴】

人材戦略変革の先駆けとなる「社内公募」と「社内FA制」

  • 思ったより普及している「社内公募制度」と「社内FA制度」
  • 富士通の「社内公募制度」:年功序列型人事の変革の先駆け
    【人事戦略は業態転換に向けた企業風土変革のため】
    【新任管理職のほとんどが社内公募で登用】
  • ソニーの「社内FA制度」:3500人以上がFA権獲得
    【主体的キャリア形成のためのソニーの多様なメニュー】

脱“人事部中央集権”で注目される「社内転職制度」

  • 自分のキャリアは自分で選ぶ「社内転職」を導入したみずほFG
  • “人事部中央集権体制”から脱却し、事業部門に人事権の移譲
  • なぜ、みずほFGは“本丸”たる人事権に手を付けたのか?
  • 社員起点の「社内転職制度」の効用と意義

解禁された多様な「副業」

  • 2018年は「副業元年」:解禁された副業・兼業
  • 社外副業の先進事例と業務内容
  • 企業間の相互副業
  • 社内副業(異動のない社内兼業)
  • 「副業」解禁の狙いと意義

時代に応じたスキルを習得する「リスキリング」

  • 時代が要求するビジネススキルの習得をめざす「リスキリング」
  • 社員にとってのリスキリングの意味
  • 企業にとってのリスキリングの意味
  • 企業主導のリスキリング先進事例

社員のキャリア形成を支援する「メンタリング」

  • 日本企業でも導入が進むメンタリング
  • 欧米のメンタリングは、ビジネススキル習得が主流
  • ジョブ型雇用を前提とするメンタリングは、日本には馴染まない?
  • メンタリングの変化型1:“教える-教わる”が逆転する「リバース・メンタリング」
  • メンタリングの変化型2:他社と組む「クロス・メンタリング」

今回は、前回に続いて、日本企業の最近の新しい人事制度を取り上げました。その考察から日本のメンバーシップ型雇用慣行は、その歴史的役割を終えたことがわかってきました。その根拠は以下の3点です。

  1. 人事部主導の年功序列型人事制度は、社員の自律的なキャリア形成を阻害している。
  2. その弊害を克服・修復しようとする、いくつかの新しい人事の仕組みが導入されている。
  3. それに気づいた企業から、人事部の任務を人事戦略に集中させている。

次回(第32回)は、第3の雇用慣行軸として、雇用形態における「正規度」を論じます。

本コラムのフルレポートは、こちらからダウンロードしてください。

(つづく)